そこそこ小さく、どんなものも楽しく美しく撮れるカメラ Stylus1
明るいレンズの高級コンパクト機とミラーレスまたは一眼レフを使い分けるというのは理想ですが、なるべく身軽にしたい旅行に1台だけ持って行くとか、日常の散歩の際にサクッと持っていく……というような場合は、重くてかさばるレンズ交換式は諦めて高級コンパクトだけになってしまいがちでしょう。
しかし、そういうときに限って、滅多に見られない野鳥に出会ったり、コンパクト機では物足りない被写体、シーンに遭遇したりするものです。
これ1台でほぼどんな状況でも満足のいく写真や動画が撮れるそこそこコンパクトなレンズ一体型カメラはないものでしょうか……。
……あります。
オリンパスのStylus1sというモデルがそれです。
コンパクト機としてはぎりぎり我慢できる大きさ、ズームは6.0mm~64.3mm(
28mm~300mm相当)で
全域でF2.8の明るさ。
撮像素子は
1/1.7型 1200万画素で、従来のコンパクト機の中ではまあまあ画素ピッチが大きい。
……と、
あらゆる要素がそこそこ高性能なレベルにまとまっている傑作カメラです。
散歩の途中で野鳥を見つけても、300mm相当の望遠でとらえられますし、望遠域をうまく使えばそこそこ背景をぼかした写真を撮ることもできます(APS-Cサイズ以上のカメラとは比較になりませんのであくまで「そこそこ」ですが、1/2.3型のコンパクト機よりはかなり雰囲気は出ます)。
しかしこの名機は生産終了になりました。オリンパスはもはやコンパクト機は作らないのでしょう。言い出しっぺの責任上、フォーサーズモデルはギリギリまで残すのでしょうが、今後はカメラメーカーというより産業用光学機器メーカーとして生き残りを探るつもりだと思います。
私は現在もStylus1をよく使っています(sのついていない初期モデルですが、ファームウェアバージョンアップでsのついている現行モデルと同等の内容になります)。
胸ポケットに入るほど小さくはないですが、気軽に持ち歩くことのできる大きさ、重さにまとまっています。レンズフードが自動開閉なのも楽ですし、電池の持ちは十分、動画もかなりきれい。300mm相当の望遠がF2.8の明るさで撮れるという魅力はもちろん、マニュアルフォーカスやマクロ撮影もできる、まさに万能機です。少し値が張りますが、「これ1台でなんでも撮れて、コンパクト機より1ランク上のクオリティが出せる」という条件で探すなら、Stylus1が一推しです。今後、このタイプのカメラは永遠に出てこないかもしれませんので、
市場から完全に消える前に買っておく価値のあるカメラ といえます。
大きくてもいいなら超望遠レンズ一体型機も面白い
Stylus1が小さなボディで28-300mm相当・全域F2.8を実現できているのは、撮像素子が1/1.7型と小さいからです。
撮像素子が小さいと、レンズが小型化できるので望遠撮影も有利になります。
レンズ一体型で超望遠性能(300mm以上)を望むとなると、撮像素子の大きさ(=画質)はある程度諦めるしかありません。
しかし、1/2.3型のセンサー+大口径望遠ズームというモデルでは、いくらレンズで倍率を上げてもきれいな絵は撮れません。
そこで各社一斉に目をつけたのが
ソニー製の1型センサーです。これはRX100が登場して以来、性能の高さに業界が舌を巻きました。
1/2.3型に比べると面積が4倍近くあるので、高倍率ズームと合わせれば、使い方によっては背景をぼかした撮影も可能です。
ただし、この手のカメラはレンズが大きくなる分、ボディもかなりの大きさ、重さ(一眼レフ並み)になります。このタイプを「ネオ一眼」などと呼ぶ人もいます。
1型センサー搭載のネオ一眼は、一世代前のAPS-Cセンサーのレンズ交換式一眼モデルより実質的にきれいな絵が撮れることもあります。それだけソニー製1型センサーは優秀だということでしょう。
私も中古でパナソニックのFZ1000を購入しました。
実写してみての紹介ページは⇒こちらです。
↓画像をクリックするとアマゾンでの価格を調べられます
ソニーRX10M3
裏面照射・積層型1型センサー搭載のシリーズ最新モデル。24-600mm/F2.4-4.0 という強力なスペック
キヤノン Powershot G3X EVFキット
24-600mm/F2.8-5.6 超望遠ズームでは必須のファインダーが外付け別売なのが惜しい
パナソニック FZH1
24-480mm/F2.8-4.5 名機FZ1000の後継機
パナソニック FZ1000
25-400mm/F2.8-4.0。FZH1が出たので、FZ1000(生産終了)の価格差が大きいうちはまだまだ魅力あるモデル。重量1kgを切る軽量なのも美点。お勧め
以上、3ページにわたり、デジタルカメラの選び方、使い分けについての基礎知識をまとめてみました。
カメラはどんどん新製品が出てくるので、製品情報は時間と共に古くなりますが、カメラ選びの基本は変わりません。
まとめると、
- 室内撮影や屋外の広角撮影、マクロ撮影はレンズの明るい高級コンパクト機でOK
- レンズ交換式カメラ(一眼、ミラーレス)は撮像素子の大きさと使えるレンズのラインアップで選ぶ
- 少し大きくていいならStylus1でたいていの状況で満足できる
- 超望遠レンズ一体型機も万能という意味ではStylus1以上。ただしセンサーは必ず1型(以上)のものを選ばないと画質が悲惨
……となります。
この理屈は物理的な制約から出てくることなので、今後、どんな新製品が出てきても根本的には変わりません。
新製品が出たら、ここに書いた理論に照らし合わせてそのカメラのよしあし、魅力を判断してください。
ガバサク流がお勧めするカメラ一覧
各カメラの画像をクリックすると現在の価格が分かります。
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オリンパス Stylus1s
……28-300mm相当で全域F2.8の明るいズームレンズ。CMOSは1/1.7型で1200万画素とそこそこの性能。まさに万能機。
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SONY DSC-RX100
インチキコンデジ時代に終止符を打った衝撃作。RX100初代機は今でも製造が続けられており、実勢価格は3万円台まで下がったので、コスパは最高。コンパクト機の中では一推し。
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SONY DSC-RX10M3
……24-600mm相当という超超広域ズーム搭載の万能機。後継機種M4が出たために少し実勢価格が下がった。
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FUJIFILM XQ2S
……2/3型というコンパクト機では大きなサイズのCMOSに1200万画素で留めている良識に乾杯! 25-100mm/F1.8-4.9。製造終了で価格が上がってしまった。
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キヤノン PowerShot G1 X Mark II
……1.5型大型CMOSに1500万画素で抑えた余裕。24-120mm/F2.0-3.9の使いやすく明るいレンズ
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パナソニック LUMIX DMC-LX100
……フォーサーズCMOSを搭載してその一部だけを使う(センサーの周辺部分を使わない)という大胆な設計。レンズは24-75mm/F1.7-2.8。望遠端は伸びないが、広角~中望遠域では贅沢な性能。ユニークさと性能バランスの点でデジカメ史上に残る名機かもしれない。
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パナソニック FZ1000
……いわゆるネオ一眼(レンズ一体型超望遠ズームモデル)の傑作。製造終了で後継機が出たので値段がこなれてきたが、品薄になればまた価格が反転高騰するかもしれない。
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ソニー α7S
……レンズ交換式を買うなら、今ではこのレベルじゃないと意味がなくなってきた。フルサイズCMOSで1220万画素の圧倒的なダイナミックレンジ。ただしボディだけで20万円