たくき よしみつ の 鐸木能光のデジカメ・ガバサク談義 ガバサク談義

ケータイカメラの高画素化を憂える

小型カメラの高画素化は馬鹿げている!

私は常々、コンパクトデジカメの高画素化は百害あって一利なしと訴えてきました。
小さな撮像素子に画素数だけ詰め込んでも、なんのメリットもありません。
最近ではケータイ端末の内蔵カメラまで200万画素超のものがあたりまえになりました。
先日、ケータイで電車に乗れるのは便利だと思って、お財布ケータイに買い換えたのですが(実際、滅茶苦茶便利です)、この内蔵カメラが207万画素。これは2007年2月現在、画素数としては少ないほうで、324万画素などという馬鹿げた画素数を詰め込んだケータイがたくさん出ています。
ケータイのカメラ機能は、小さな小さなCMOSに記録されますが、そこにこれだけの画素数を詰め込めば、1画素あたりの受光量は極端に減り、色調がまともに得られないのは分かりきっています。
コンパクトデジカメの1000万画素も同じことで、メリットよりデメリットのほうがはるかに大きいでしょう。
実際に、このケータイでどれだけの写真が撮れるのか試してみましょう。

U50と対決

同じ200万画素デジカメとして、愛用しているSONYのU50と同じ状況で撮影比較してみました。
U50は2003年の製品で、とっくの昔に製造中止になった数世代前のデジカメです。画素数は200万画素(私はこのカメラを使っていて、画素数を不足だと感じたことはまったくありません。極端な色味やレンズのクオリティには不満ですが……)。
比較するケータイはauのW43H(日立製)です。


W43H

U50
一目瞭然で、ケータイは色の再現性が悪いことが分かります。小さなCMOSを使っているのですから、画素数もそれなりに落として、無理のない設計にすればいいものを、無理に画素数を欲張った弊害ではないでしょうか。
奥に写っている樹木の部分だけトリミングしてみると、いかに階調が低く、使い物にならないかが分かります↓

W43H 1600×1200の一部

U50 1632×1224の一部
別の角度で撮ったものを↓

W43H

U50

W43H

U50

高解像度で撮るときれいなのか?

では、同じケータイで、高解像度で撮った写真と低解像度で撮った写真を比べた場合、高解像度のほうがきれいなのでしょうか?
W43Hで最高解像度(1600×1200)で撮ったものを640×480ピクセルにリサンプリングしたものと、最初から640×480で撮ったものを比較してみました。

1600×1200で撮影

640×480で撮影


1600×1200で撮影(原寸)

640×480で撮影(原寸)

ケータイで撮影した写真は、せいぜいWEBにアップするといった用途でしょうから、200万画素以上などという高解像度は必要性を感じませんし、むしろ加工の手間がかかる分面倒です。また、ケータイの200万画素以上で撮った写真のクオリティでは、大きく印刷しようという気にもなれないでしょう。
いい加減、馬鹿げた高画素競争はやめて、身の丈に合ったバランスの性能を熟成させてほしいものです。
しかし、ケータイの内蔵カメラでも十分、メモ代わり写真は撮れることも、ある意味、感動的です。こうなると、コンパクトデジカメの存在意義は、ケータイに比較して、いかに簡単に、面白い、きれいな写真が撮れるかということにつきるわけで、バリアングルモニターのない現在のコンパクトデジカメには、私はまったく魅力を感じていません。U50の性能を現代のレベルに合わせたものが出れば、確実に買いたいと思いますが、残念ながらそうした製品は市場から消えてしまいました。
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