フォーサーズ機を考える
フォーサーズ機を買って幸せな人と不幸せな人
現在、デジタル一眼の大半はAPS-Cサイズという撮像素子(CCDやCMOS)を持つモデルです。
よく、デジタル一眼レフカメラのカタログ記事で、フォーサーズ機とAPS-Cサイズ機、フルサイズ機を一緒くたに紹介しているのを見ますが、あれでは初心者はどれも同じ「デジタル一眼レフカメラ」と勘違いしてしまうでしょう。
フォーサーズ機は、オリンパスが提唱しているデジタル一眼レフカメラの統一規格ですが、現時点ではオリンパス以外ではパナソニックしか出していません。
一般的な(APS-Cサイズ)一眼レフの撮像素子は、メーカーや機種によって多少のばらつきがありますが、概ね23mm×17mm程度(約390平方mm)です。これはフルサイズ撮像素子(36mm×24mm=864平方mm)の半分弱の面積に相当します。
これに対して、フォーサーズの撮像素子は17.3mm×13.0mm(=224.9平方mm)で、APS-Cサイズに比べて半分強(約58%)、フルサイズに比べると26%しかありません。
撮像素子種類 | 面積比較 | サイズ | 搭載機種例 | 解説 |
フルサイズ | | 36×24mm | 現行機種ではCanon EOS-1Ds 5D、EOS-5D、Nikon D3、D3X、D700、SONY α900 など | 35mmフィルム1コマのサイズ。Nikonでは「FXフォーマット」と呼んでいる。搭載モデルは高価で、実勢価格15万円以下のものはまずない。 |
APS-Cサイズ | | 23.4×16.7mm に近いサイズ | Canon、Nikon、Pentax、SONYのほとんどのデジタル一眼 | モデルやメーカーによりサイズはまちまち。Nikon D80は23.7×15.6mm、Canon EOS Kiss DigitalXは22.2×14.8mm |
フォーサーズ | | 17.3×13.0mm | OlympusのEシリーズ、Panasonic のGシリーズ | オリンパスが提唱しているデジカメ一眼レフの「共通」規格。パナソニックも参加。ミラーレスでさらなる小型化を図ったマイクロフォーサーズ規格も、撮像素子面積は同じ |
フォーサーズを買うかどうか迷っている人は、まず、この撮像素子の大きさという問題をどう考えるかにかかっています。
また、その後、
フォーサーズはミラーレス仕様の「マイクロフォーサーズ」に重点を移しました。
これにより、従来型フォーサーズ専用レンズの開発は事実上終わったと見ていいでしょう。そうなるとますます従来型フォーサーズの一眼レフモデルというのは、もう終わったのではないか、と思われてしまいます。
問題はレンズ資産とボケ具合
撮像素子面積が小さいと、具体的にどんな差が出てくるでしょうか。まず、欠点としては、
- 解像度的に不利
- レンズの焦点距離が短いので背景をぼかしにくい
ということになります。画角的には、APS-Cサイズのデジカメは、35mmフィルム換算で約1.5倍の画角になるのに対して、フォーサーズでは約2倍になります。
例えば、シグマの18-50mm F2.8 EX DC というレンズは、Nikon用、Pentax用、Canon用、SONY用だけでなく、フォーサーズ用も出ています。しかし、このレンズをNikonにつけた場合、画角は35mmフィルム換算で約27-75mmになりますが、フォーサーズ用は2倍するわけですから、36-100mmになり、望遠側が若干伸びる代わり、広角は撮れないわけです。
フォーサーズ用のレンズは、オリンパス純正(ズイコーブランド)以外ではあまり存在しません。ライカブランドでも出ていますが、相当高価です。従って、レンズを揃えていく上で、現時点ではかなり不利です。マイクロフォーサーズが出てからは、ますます新製品は出にくくなりました。実際、シグマは30mm/F1.4というレンズをフォーサーズ用にも作っていましたが、現在では新品では入手困難です。
また、レンズの焦点距離が短いということは、背景がぼけにくいということです。35mmフィルム換算で50mm程度の画角で撮った場合、実際の焦点距離は25mmですから、被写界深度はかなり深くなります。これは、ポートレート撮影などではかなり不利です。
フォーサーズの利点
こうしたことから、フォーサーズ機は他のデジタル一眼レフカメラとは「別のカメラ」として捉える必要があります。私自身は、自分で使うことはあまり考えていませんでした。最大の理由は価格が高いこと。次がレンズが限られること、背景がぼけにくいこと、です。
しかし、E-510が出たあたりで、少し考えが変わりました。撮像素子面積が小さいことに起因する弱点を補ってあまりある長所も見いだせるからです。
- コンパクトである
- モニターがライブビュー可能なので、撮影姿勢の自由度が高い
- レンズは完全な専用設計なので精度などが信頼できる
しかも、E-510にはボディ側に手ぶれ補正機能が搭載されています。
レンズ一体型デジカメでは物足りない、でも、デジタル一眼レフカメラは重すぎると考えている人には、かなり魅力的なカメラでした。
解像度的には撮像素子面積が小さいので不利なはずですが、最初からきっちりと規格を定めたことにより、レンズがデジタル撮像素子に最適化でき、カチッとしたシャープな写真が撮れます。
しかし、その後、マイクロフォーサーズ規格が出たために、従来のフォーサーズモデルの立ち位置はますます不明瞭なものになってしまいました。
現状で選べるレンズはこの3本くらいか?
問題はレンズです。もとからボディが高価(安いAPS-Cサイズのデジタル一眼が2台買える!)なので、素性のよいレンズを揃えると相当な金額になります。
また、もはや従来のフォーサーズ仕様で新製品のレンズというのは出てこないでしょう。シグマも撤退し、マイクロフォーサーズ仕様のみになってしまいました。
現時点でアマチュアが普通に使えそうなのは、こんなところでしょうか
サムヤンのマニュアルレンズ(いくつかフォーサーズ用も出ています)あたりまで視野に入れないといけないところがなかなか……。
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35mmフィルム換算で28-108mmの使いやすいズーム。明るさもセット販売のものよりは一段明るい。実売価格5万円強
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35mmフィルム換算で80-300mmの望遠ズーム。野外の撮影ではかなり威力を発揮しそう。実売価格2万円台半ば
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| サムヤンという韓国のレンズメーカーの単焦点標準レンズ。F1.4の明るさを持つデジタル一眼専用レンズだが、フォーサーズ用だと実質70mmの中望遠になる。室内ポートレートでは威力を発揮するが、惜しむらくはマニュアルフォーカス。10.9 x 8.3 x 8.3 cm 。 685 g
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フォーサーズの今後と課題
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このように、フォーサーズ機はレンズ込みで考えると、APS-Cサイズデジタル一眼(SONY、Pentax、Nikon、Canon)の最安値モデルに比べて相当割高になります。また、背景をぼかしたい撮影では不利ということも知っておかなければなりません。
しかし、角度可変のライブビューモニターを採用したモデルがありますし、コンパクトなボディでシュアな映像が気軽に撮れるというメリットもあります。コンパクト機では撮れない品質の写真をサクサクと撮っていくというポリシーには合致しています。
ただ、メーカーとしてもマイクロフォーサーズに軸足が移動してしまった今となっては、よほど安いとか、何か理由がない限り新しく揃えるカメラセットとしては選択肢に入ってこないのではないかとも思います。
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