たくき よしみつ の 鐸木能光のデジカメ・ガバサク談義 ガバサク談義

ソニー α330はα300の改良になっているのか?

α330を買ってしまった

私の現在の常用機はα300とLX3です。この2つには多少の不満はあるものの、他のモデルとは一線を画す長所を揃えているため、当分、買い換えることはないと思っていました。
今年、α300の後継機種α330が出たということで、どんな進化をしたのか(あるいはダメになったのか)気になっていました。
α330は、ボディがほんの少し小型化し、AF速度が向上し、液晶が明るく見やすくなったとのこと。どれもそうなってくれればいいなあと望んでいたポイントなので、この情報を聞く限りでは、明らかに正常進化したモデルだと信じていました。
しかし、α300と基本性能はあまり変わらないので、買い換えるまでにはいかないなあと、ぐっと我慢していたのであります。
でも、買ってしまいました。
今日(2009年8月19日)届いたのですが、いくつか大きな誤算がありました。
以下、リポートします。

こんなグリップでは重いレンズは支えられない


最大の誤算は、グリップの改悪でした。少しでもボディを小型化しようとしたのと、ジョグダイヤルをボディの前面に配置したため、本来人差し指がひっかかるべきグリップ上部の出っ張りがまったくなくなっているのです。
グリップそのものも薄く、浅くなってしまい、ギターを弾くために爪を伸ばしている私には致命的な改悪でした。
軽いレンズを装着しているときはまだいいのですが、私の場合、常用しているのが18-250mmという重く長さのあるレンズなので、右手でひょいと持ち上げるのも難しくなりました。余計な力がかかるため、α300より重く感じます。
一眼レフの重さ、大きさというのは、絶対値ではなく、人間工学的なデザインによるところが大きいのだと、つくづく思い知らされました。
この一点だけで、使い続ける気持ちが萎えました。


右がα300、左がα330。グリップの厚みがこれだけ違う。

グリップベルト
アクセサリとして売られている2種類のグリップベルト。α330にはこれは必須かもしれない

液晶は本当に見やすくなったのか?


α300のモニター可動範囲
α300のモニター可動範囲

α330のモニター可動範囲
α330のモニター可動範囲 (以上、SONYのサイトより)

α330に最も期待したのは、明るく見やすくなったという液晶でした。α300はAPS-Cサイズのデジタル一眼レフの中で、現在唯一角度可変モニターを持ち、リアルタイムライブビューができるモデルです。これは圧倒的な長所なのですが、屋外での撮影では液晶画面が光ってしまいまったく視認できないことがよくあります。せっかくの角度可変モニターなのに、事実上機能しないでいらいらさせられていたので、これが解決できるなら買い直してもいいと思ったのです。
しかし、屋外での撮影ではそれほど見やすくなったという印象はありませんでした。多少はよくなっているのかもしれませんが、やはり見えません。
液晶の明るさを自動調整するAUTOというモードが新たに加わっているのですが、これも屋外ではもっと明るくしたいときに逆に暗くなって見づらくなるなど、意味がありません。これだと、屋外撮影では最初から最大値の明るさにしておくしかありません。
それ以上に気になったのが、液晶が手前に引き出せなくなったことです。多少角度が大きく変わるようになったということですが、垂直方向に見上げるポジションなどでは、液晶が引き出せないためにかえって見えなくなります。
↑ 左がα300。液晶が手前に引き出せるため、垂直に立てたときでも液晶が上から見えるが、α330は大きく引き出せないために、目線から下に構えたときは、ボディに隠れて見づらい(右)。

遅くなった連写速度

撮影してみる前から疑問点がいっぱい出てきましたが、いざ撮影してみると……ん?
私は常にオートブラケット連写で撮影するのですが、明らかに今までより遅いのです。
カタンカタンカタン……だったのが、カタン・カタン・カタン……という感じ。おかしいなあと思って改めて仕様表を見ると、α300は3コマ/秒だったのが、α330では2.5コマ/秒に落ちていました。
まさか後継機で性能低下する部分があったとは思いもよりませんでした。
この価格帯のユーザーは連写速度にこだわらないということなのでしょうか。
私自身は連写モードはあまり使いませんが、今までより遅くなったのは腹が立ちます。α300だって、決して速いとは言えないのですから。

モード設定関連の改良は○

以上が明らかな改悪点で、他は改良されています。
操作系はずっと分かりやすくなりました。α300の左側の操作ボタンは、あまりにもレイアウトを考えていないなあと呆れていた点なので、ようやく他社モデル並みにまともになったというところでしょうか。
液晶にガイド画面が出るのは煩わしいですが、これは設定で消せます。
ファインダー内に測距点が出っぱなしなのは、煩わしいと思うか見やすいと思うか、人によって意見が分かれるところでしょう。
私はほとんど中央でしか測距しないので、周りの点は消えてくれたほうがすっきりします。
バッテリーが小型になりましたが、持ちがどうなのかは、使い込んでいないので分かりません。α300のバッテリーは長時間持ちましたから、予備バッテリーの出番はほとんどありませんでした。
α330からSDカードが使えるようになったのは大きな進歩です。ようやくソニーも、こういうところで変な意地を張らなくなったようです。

ホールド性に問題を感じない人は買い

α300が、ソニーが期待していたほど売れなかったのかどうか、私は知りません。しかし、α330は明らかに女性ユーザーを意識して作り替えられたようです。
実際、あのグリップ形状の大胆変更は、女性モニターを使って決定したのかもしれません。女性でも、爪を伸ばしている人などは多いと思うのですが……。
というわけで、このグリップさえ我慢できれば、あるいはこちらのグリップのほうがいいと感じるなら、特に問題なく使えますし、現行機種で一推しであることに変わりはありません。
しかし、こうなるとα300は幻の名機になってしまうことになりかねませんね。外観的には地味で、ボタンレイアウトなどもα330に比べると煮詰められていませんでしたが、私にはとてもしっくりくるカメラなのだと再確認できました。
ソニーのデジカメ部門には、お役人的な上司と優れた開発スタッフがいるような気がしてなりません。
「女性に受けるように」などという軟弱なことではなく、しっかりとα300の正常進化型を出してほしいものです。


★★撮影サンプルは「阿武隈日記」のほうに載せておきます

『デジカメに1000万画素はいらない』(講談社講談社現代新書) 『デジカメに1000万画素はいらない』(講談社現代新書 カラー版 税込987円)
  be連載の『デジカメのキモ』で扱った写真をすべてカラーで使い、「デジカメ界の間違った常識・思いこみ・誤解」に切り込む。楽しい写真を眺め、ぐいぐい読める読み物として楽しみながら、読了後にはデジカメ撮影の腕が劇的に上がっているという、一粒で三度おいしい本。
発売2週間で4刷り40000部達成。    Go!Go!(立ち読み版はこちら)

Amazonで購入はこちら    bk1で買うbk1で買う    クロネコブックサービスで買う    紀伊國屋WEBで買う



目次へガバサク談義トップへ  前に一つ前に

comに代わる新世代ドメイン .COドメイン   ★タヌパック音楽館は、こちら
よい買い物は人生を変えることがある
★狛犬ネットは、こちら
  takuki.comのHOMEへ
(takuki.com のHOMEへ)


リンク